ヨーグルトを食生活に摂り入れている人の中には、「自家製ヨーグルト」を作っている人も多いと思います。
お好みのヨーグルトを安く大量に食べられるのが「手作り」の良いところ。
でも、手作りであるがゆえに発酵がうまくいかず“失敗”した経験がある人も多いのではないでしょうか。
もちろん、自分なりに「多分これが悪かったんだろうなぁ」と思い当たる原因があれば、それを改善することで次回は成功できますよね。
ところが、中には原因が思い当たらず、失敗を繰り返してしまうことがあります。
しかし、一見「原因不明」に見えたとしても、発酵がうまくいかないのには必ず理由があるんです。
今回は、そんな“原因不明の原因”を教えちゃいます!
自家製ヨーグルトを諦めかけている人、必見です!
ちなみに自家製ヨーグルトの基本的な作り方を知りたい人はコチラの記事をお先にどうぞ♪
温度の問題
いちばん考えられる原因はコレ、温度が合っていないという場合です。
乳酸菌の培養に適した温度は菌種によって異なりますが、自家製ヨーグルトに使われるのは、次の3つでしょう。
【乳酸菌種による至適温度】
菌種(学名) | 代表的な商品 | 至適温度 |
ブルガリア菌 (Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus |
ブルガリアヨーグルト(明治) | 約40℃ |
ガセリ菌(Lactobacillus gasseri) | ナチュレ恵(雪印メグミルク) | 約40℃ |
クレモリス菌(Lactococcus lactis subsp. cremoris) | カスピ海ヨーグルト(フジッコ、グリコ) | 約25~30℃ |
ここで示した「至適温度」とは、その菌が元気に生活できる…すなわち発酵に最適な温度のことです。
表を見るとわかるように、菌によって至適温度は異なりますが、ヨーグルトに使う乳酸菌に限定していうと、クレモリス菌以外はだいたい40℃前後が大好きといえます。
もちろん、この温度帯以外だと菌が死んでしまうわけではありません。
活性が低下した状態または休眠状態になり、生きてはいますが、発酵を行わないか少しずつしか進行しなくなります。
逆に至適温度を超えてしまっても菌の活性が落ち、発酵のペースが落ちていきます。
私たちがあまりに暑くても寒くても具合が悪くなるのと同じですね。
そして60℃を超える高温になると、ほとんどの乳酸菌は発酵できなくなり死んでしまいます(サーモフィルス菌のように耐えられる菌もいます)。
ここで発酵が失敗する原因として考えられる可能性は、至適温度帯を維持できていないということです。
温度が高すぎても低すぎてもダメ、ということです。
「そんな基本、知ってるよ!」という声が聞こえてきそうですが、敢えて書きます。
「発酵の最初から最後までその至適温度をキープできていますか?」
…そう、意外な落とし穴とは、この“最初から最後まで”なんですね。
多くの場合、種菌を植える牛乳は冷蔵庫から出したばかりのものです。
ですから、牛乳の温度は10℃前後でしょう。
これに種菌を入れて、その菌の至適温度になるまでにどのくらいの時間がかかっているか、計ったことはありますか?
機種にもよりますが、ヨーグルトメーカーを使ったとしても意外とかかるものなんですよ。
…というのも、ヨーグルトメーカーにセットしたら、発酵が終わるまで触りませんよね?
この場合、静置した液体全体を温めるのは、“対流”という物理現象だけです。
つまり、温まった液体が上昇し、冷たい液体が下降する…これを繰り返して全体が温まるのを待つわけです。
ですから、発酵がスタートするのは「牛乳の液温が至適温度に近づいてから」と認識しておきましょう。
発酵に要する時間は本来ここからスタートなのです。
なので、この温度上昇に時間がかかるタイプのヨーグルトメーカーを使っている人や、ヨーグルトメーカー自体を使っていない人は、本来の発酵終了の目安時間よりも早いタイミングで発酵が終わったんじゃないかと勘違いしていることが多いのです。
この場合の解決策は簡単です。
失敗しているわけではありません。気長に待ちましょう!
え?待っていられない??
そんな人は裏ワザ、「種菌接種後に何度か撹拌する」をやっちゃいましょう。
これをやると、対流だけに頼るより、早く温度が上昇します。
ただし、発酵は少しずつ進んでいるため、でき始めたカードを崩してしまう可能性がありますので、発酵の初期段階でのみ行うようにしてくださいね。
ちなみに“カード”とは発酵によってできた乳タンパクのネットワークによる固まりのことです。
え?ヨーグルトメーカーにセットしたら寝ちゃう??
そういう人は、先に牛乳の液温を上げてから種菌を植えましょう。
牛乳パックごと入る電子レンジなら、1Lで500w・2分くらいチンしておきましょう。
フタを開け、牛乳の量を少し減らしてからやってくださいね。
スタート液温が高くなるだけで、発酵完了までの時間が早くなりますよ!
なお、おすすめのヨーグルトメーカーについてはコチラの記事をどうぞ↓
種菌の活性の問題
疑わしいけど確信が持てないのがコレ、種菌の問題です。
どんな菌も保管や植え継ぎしている間に少しずつ変化がおこり、もともとの菌と異なる性質になったり元気がなくなったりしていきます。
研究所などでは-50℃の冷凍庫などで厳密に管理しているため変化は少ないのですが、家庭では無理というものです。
ですから、今までと同じようにヨーグルトを作っているのに発酵がうまくいかなくなったという人は、思い切って種菌を新しいものに替えてみましょう。
でも、カスピ海ヨーグルトはその発祥の地で代々受け継いできた菌株を使っているのですから、「菌が変化しちゃうなんておかしい」と思うかもしれませんね。
だけど、日本人だってどの家庭でも糠みそを腐らせないわけではありません。
上手に作っている家庭には、糠みそを上手に維持する術も伝授されているハズです。
カスピ海ヨーグルトのクレモリス菌も、その地域の環境や同居する細菌の力などの条件が整っているからこそ現代まで受け継がれているのですから、風土や条件の異なる日本の方が菌の変異が起こりやすいということも考えられるでしょう。
種菌を新しいものに替えるのは簡単ですね。
種菌を購入しているのなら買い直す、市販のヨーグルトから入手しているのであれば新しいものから植え付ける…だけで済みます。
もしも、菌がもう入手できないレアもの(?)の場合は、種菌の10倍量にあたる少量の牛乳に植えて発酵(例:大さじ2杯程度の種菌(粉末でないもの)を100mlの牛乳で発酵させる)というのを3回くらい繰り返してから、いつも通りヨーグルトを作ってみてください。
これを行うと、活性の悪い乳酸菌が淘汰されて、活きの良い菌だけが残ります。
これでもヨーグルトが失敗してしまう場合は、残念ながらその種菌は諦めましょう。
なお、市販のヨーグルトから種菌を取っている場合、植え継ぎを繰り返しているうちに菌叢(菌の割合のバランス)が変化している可能性があります。
もともと市販のヨーグルトは単一ではなく複数の乳酸菌(あるいは他の細菌)で構成されているものがほとんどです。
これを自家培養していると、知らないうちに特定の菌が生育しやすい(あるいは生育しにくい)条件が整ってしまい、いつのまにか菌叢が大きく変わってしまったということが起こる可能性があります。
こうなると、初めのころと発酵終了のタイミングやヨーグルトの品質に変化が現れることがあるのです。
市販のヨーグルトの組み合わせでは、『ブルガリアヨーグルト』のブルガリア菌とサーモフィルス菌、『カスピ海ヨーグルト』のクレモリス菌と酢酸菌の組み合わせが有名です。
これらの菌は互いに補い合って環境を作り、スムーズな発酵が行える条件を整え合うのです。
仲のいいお友達というわけですね。
この性質を利用してヨーグルトを製品化しているわけですが、これが崩れたことで自家製ヨーグルトの成功率が下がったり、出来あがりが変化したりすることもあり得ます。
種菌を新しい製品から摂り直せば改善できるはずですので、試してみましょう。
作製時の問題
最後に考えられるのが、今まで行ってきた自分の作り方が、種菌や培地(この場合は牛乳)に合わなくなっている可能性です。
ルーティンで行う作業になっていると、自分ではなかなか気づきにくく、いちばん厄介な原因かもしれません。
今一度、使っている種菌と作業が適切か、見直してみましょう。
季節変動を考慮しているか
特に失敗しやすいのが、室温で発酵ができるカスピ海ヨーグルトを作っているケースです。
特に朝晩と日中の気温差が大きい梅雨や秋などは、日中は25℃以上あっても、朝晩は15℃以下まで下がることも少なくありません。
前述の通り、液温が低ければ発酵にはより時間がかかりますから、温度管理をまず見直しましょう。
加えて菌の活性が落ちていると、たとえクレモリス菌といえども25℃でヨーグルトを作るのは難しくなってきます。
最悪なのは種菌を植える過程のどこかで雑菌が混入し、クレモリス菌よりも速く雑菌の増殖が起こった場合です。
この場合は発酵ではなく腐敗となりますから、種菌は常に活性の高いもの(新しいもの)を使うよう心掛け、十分に注意しましょう。
なお、クレモリス菌の至適温度帯ではあっても、20℃より30℃の方がスムーズに発酵しますよ。
自家製カスピ海ヨーグルトの超カンタンな作り方はコチラで紹介しています。
併せてぜひご覧ください↓
種菌がきちんと混ざっているか
粉末の種菌は購入費がかかりますが、管理も植菌もカンタンで、混入後よく振ればきれいに拡散させることができます。
ところが、市販のヨーグルトから植菌する場合、多くはカードが形成されていますから、スプーンですくったカードをボトンと落とす感じになります。
このカード、意外と崩すのは厄介で、拡販にはちょっとしたコツがいります。
特に、カスピ海ヨーグルトの粘性の高いカードは、振ってもそう簡単に分散してくれません。
なので、植菌→振る→加温と作業を進めても、実はカードの塊が下に沈んだままで、何時間たっても上の方は発酵が進んでいないという事態が発生します。
「あー、失敗した」と思って流しに捨てていたら、底の方ではヨーグルトが出来ていた…なんて経験、ありませんか?
これが正にその“撹拌不十分”な状態なんですね。
いちばん確実なのは、衛生的に行う必要がありますが、種菌に使うヨーグルトのカードを予めよく崩しておくことです。
必ず殺菌したスプーンを使って手早く行ってくださいね。
難しければ、植菌の時にすくった種菌を何度かに分けてポトン・ポトンと落とすだけでも分散率は上がります。
後は容器のふたをして、静かに丁寧に満遍なく振りましょう。
陥りがちな自家製ヨーグルトの失敗の解決策を紹介してきましたが、いかがでしたか?
乳酸菌はとってもデリケート!
生育の条件が整わなければ途端に元気をなくしますし、条件が良ければ必ず牛乳をおいしいヨーグルトに変えてくれます。
自分や家族の健康管理をするように、乳酸菌の発酵条件も見直してあげてください。
成功への道は必ず拓けますよ!!
正しい乳酸菌の知識を学び、あなたに美容健康ライフを!!!