「健康」というと内臓や骨格など体の内部に目が行きがちですね。
でも、寿命が延びたことによって、この他にも健康を保つことが重要とされた部分があります。
それは「歯」。
栄養を摂るための最初のプロセス“咀嚼(そしゃく)”を行う部位です。
歯が悪くなる原因には歯周病や虫歯などがありますが、なんと心臓病などのリスクを高めることにもつながってしまうんです。
健康な体を保つには、健康な歯が不可欠というわけですね。
ところで、この「歯の健康」に役立つ乳酸菌がいるって知っていますか?
今回は、テレビでも取り上げられて話題になっている、歯の健康を保つ乳酸菌“L8020菌”を紹介します。
L8020菌とは?
L8020菌の正式名称は「ラクトバチルス・ラムノーザスKO3株(Lactobacillus rhamnosusKO3)」。
広島大学歯学部の教授で歯学博士の二川浩樹先生によって発見された菌です。
二川先生は、う蝕(いわゆる虫歯)にかかったことのない子供13名の唾液から42種類の乳酸菌を分離し、その中から虫歯菌(ラクトバチラス・ミュータンス)の抑制効果がある菌“L8020菌”を探し出しました。
効果については詳しく後述しますが、「毎日食べれば虫歯菌・歯周病菌が8割減少する」という優れモノ!
2016年5月25日放送の「ホンマでっかTV」でも紹介され、話題になっています。
“8020”という菌の名称は、「80歳になっても自分の健康な歯を20本残そう」という願いから付けられたそうです。
歯医者さんなどで、同じ意味を込めた「8020(ハチマルニイマル)運動」の標語を見たことがあるかもしれませんね。
歯周病・虫歯について
L8020菌の効果を説明する前に、歯周病や虫歯がおこるメカニズムについて知っておきましょう。
歯周病
歯周病は主にプロフィロモナス・ジンジバリスなどの菌に感染することで発生します。
歯と歯茎の間に棲みつき、ゆっくりと歯の周囲の組織を溶かしていくので、最終的には歯を支える土台の部分がなくなって、歯が抜けてしまいます。
厄介なのは、虫歯と違って痛みがないことが多く、気がついた時には歯がグラグラになっていること。
歯を失う比率は、虫歯よりも歯周病の方が圧倒的に多いので、注意が必要です。
また、歯周病は日本人がかかる一番多い病気です。
しかも、心臓病・脳血管障害・糖尿病・肥満の原因にもなりうるので侮れません!
日本臨床歯周病学会によると、歯周病の原因菌の刺激によって動脈硬化を誘導する物質が出されて狭心症や心筋梗塞を起こしたり、糖尿病と歯周病の関連性も明らかになったりしているとのこと。
http://www.jacp.net/perio/effect/
気をつけなきゃ‼ ですね。
虫歯
あの何とも言えない痛さ(泣)!思い出すだけでゾッとしますね。
この虫歯の原因は、ミュータンス菌などの細菌(通称:虫歯菌)が歯の表面に張り付き、酸を産生して歯を溶かすことでおこります。
進行すると、歯の内側の神経部分にまで到達し激しい痛みを伴うようになり、放置すると歯をすべて溶かしてボロボロにしてしまいます。
虫歯自体は主に歯だけに影響を与え、歯茎に炎症をおこすことはあまりありません。
治療・予防と現状
さて、虫歯になってしまうと歯医者さんに通って、虫歯菌が侵した部分を削りとり、そこに詰めモノやかぶせモノをしてもらいます。
最悪の場合、抜歯するケースも起こり得ます。
麻酔をしてもらえば治療の痛みは軽減されますが、あの歯を削る音は、できれば聞きたくありませんね。
一方の歯周病の場合、治療法はただ1つ。菌の付着した部分をきれいに掃除することなんです。
歯周病になってしまったら、歯医者さんできれいに掃除をしてもらったうえで、せっせと自分で毎日のケアをしていくしかないのです。
歯がグラグラになっていては回復できませんが、掃除によって菌を除去できれば、健康な歯茎に戻せます。
こういった虫歯や歯周病によって、自分の大切な歯を失う人は大勢います。
成人の歯の数は、親知らずの有無などによる個人差はありますが、およそ28本。
しかし、厚生労働省によると、後期高齢者(75歳以上)の歯の保有数は約13本で、半数以上が失われている状況です。
後期高齢者で20本以上の歯を持つ人は37%、3人に1人が総入れ歯を使っているそうですから、国も改善に力をいれており、前述の「8020運動」も厚生省(当時)が掲げたものです。
このようなデータを見ると、“健康な歯を死ぬまで維持する”ということがどんなに大変かわかりますね。
通常、生きていくには毎日3食を摂らなければなりませんから、当然のことながら歯のケアも1日3回は必要なわけです。
しかも、それを正しくきちんと行わなければ、虫歯や歯周病のリスクは高まっていきます。
これは意外と大変なことですよね。
そこで予防ケアとして注目されたのが、乳酸菌“L8020菌”というわけです。
L8020菌の効果と科学的根拠
では、L8020菌にはどのような効果があるのでしょうか?
主に、次の3つを挙げることができます。
・ 虫歯菌(ミュータンス菌)の減少効果
・ 歯周病菌(ジンジバリス菌)の減少効果
・ カンジダバイオフィルムの抑制効果
これらの効果は、この菌で作ったヨーグルトを用いた臨床試験で確認されていますので、信頼性が高いといえるでしょう。
それでは、データとともにそれぞれ見てみましょう。
虫歯菌(ミュータンス菌)の減少効果
L8020ヨーグルトを2週間食べ続けるグループ(25人)と、普通のヨーグルトを2週間食べ続けるグループ(25人)に分けて実験したところ、L8020ヨーグルトを食べたグループにおいて、ミュータンス菌が口腔内から8割以上減少するという結果が出ました。
スゴイですね!8割ですよ!!
シャーレなど実験室レベルでの検証結果では99.9%の虫歯菌が死滅するというデータが出ていますから、かなり期待できますね!!
歯周病菌(ジンジバリス菌)の減少効果
歯周病は多くの菌によって発生する病気のため、L8020菌がすべてを殺菌できるわけではありません。
でも、代表的な菌であるジンジバリスでの殺菌・抑制効果は確認されていて、ミュータンス菌と同様の実験により、2週間で口の中の歯周病菌が4~9割減るという結果が出ています。
菌体への効果もすばらしいのですが、さらに注目したいのが“LPSの中和効果”です。
“LPS”とは菌体の殻にある毒素のことで、内毒素とも言い、歯周病の多くはLPSによって引き起こされると言われています。
L8020菌にはこのLPSを中和し、歯周病になりにくい環境を作ったり、改善したりする効果があるのです。
口の中は凹凸が多く、深部まで中和することはできませんが、L8020菌が接することができる浅い歯周ポケットや菌が多く集まる舌の上などに対する効果は期待できますよ。
カンジダバイオフィルムの抑制効果
カンジダ菌は誰の口にもいるカビの一種(常在菌)で、他の菌と縄張り争いをしているため、通常は増えすぎることはありません。
しかし、免疫力が低下していたりすると増えはじめます。
カンジダ菌は健康な人には害はありませんが、この菌の代謝物で作られる「バイオフィルム」に他の菌が絡まって増殖しやすくさせてしまうため、歯周病のリスクが高まるわけです。
実は、歯医者さんなどで歯がちゃんと磨けているか確認する“染め出し”は、カンジダなどのバイオフィルムを染め出しているんですよ。
磨き残しの多さに、ドキッとした経験がある人も多いのではないでしょうか?
ところが、L8020菌にカンジダ菌やバイオフィルムを抑制する効果が確認されたのです。実験結果をみると、約9割を抑制できています。
これによって、間接的に歯周病を予防・改善することができるわけですね。
L8020菌を使用した商品
虫歯や歯周病の予防や改善への効果が確認されたL8020菌。
この菌を使用した商品が口腔でのプロバイオティクスとして注目を浴びています。
L8020菌は、広島大学発のベンチャー企業“CampusMedico(キャンパスメディコ)”によって研究開発・製造・販売・技術移転などされています。
この菌を含んだ商品には食品や口腔ケア用品などがあり、製造・販売会社などは異なっています。
いずれも小売店での購入の他、ネットなどでも入手可能です。
主だったものを紹介していきましょう。
(画像をクリックすると楽天の商品ページに飛べます)
紀陽除虫菊㈱『クチュッペ L-8020 マウスウォッシュ』
洗口液タイプ(低刺激性)の商品です。
入浴剤や蚊取り線香などのメーカーで製造されています。
10mlを口に含んで20秒クチュクチュして吐き出すだけ…というお手軽さで、虫歯菌や歯周病菌を撃退できるのだから驚きですね!
ジェクス㈱『チュチュベビー おくちの乳酸菌習慣タブレット』
こちらは1歳半の赤ちゃんから使える虫歯予防商品です。
ヨーグルト風味とレモン風味があり、舐めて溶かすだけのタブレットタイプです。
生後7か月から使える顆粒タイプも販売されています。
歯磨きが難しい年齢から高い効果のある口腔ケアができるのは、ありがたいですね!
しかも学校歯科保健用品推薦!
同シリーズでマウスウォッシュもありますよ。
四国乳業㈱らくれん『8020ヨーグルト』
乳酸菌といえばヨーグルト!
王道ではありますが、L8020菌はヨーグルトの製造に適した乳酸菌ではないために、製品化までには多くの苦労があったそうです。
口腔ケアのためのヨーグルトなので、できれば砂糖を使わずに製品化しようとしたらしいのですが、この菌で作られたヨーグルトは比較的酸味が強いため、断念したという裏話も。
砂糖は虫歯の原因にもなりますが、このヨーグルトでのヒト試験でも虫歯菌・歯周病菌の減少が確認されています。
砂糖の増殖効果よりもL8020菌の抑制効果の方が勝っているわけですね。
効果を得るには1日1個、毎日続けるのが大切とのこと。
食べるタイミングはいつでもOKとのことですが、二川先生のおすすめは朝と昼、歯磨き後に食べるのが良いそうです。
この理由は次項にて。
同シリーズでドリンクタイプもあります。
歯磨きも忘れずに!!
「こんなにスゴイL8020菌を使えば、歯磨きしなくてもいいんじゃない?」と思う人がいるかもしれませんが、「ソレダメ~」です(笑)。
歯にはプラーク(歯垢)などの汚れがこびりついており、その内部に虫歯菌や歯周病菌が棲みついています。
これをこすり落とすことが、歯磨きの目的です。
歯磨きによってプラークが除去されれば、より多くの虫歯菌・歯周病菌にL8020菌の作用が届きやすくなります。
前項で「歯磨き後にヨーグルトを食べるのがおすすめ」と書いた理由は、ココ。
歯磨きしても虫歯菌・歯周病菌はまだ残っていますが、そこにL8020菌を投入(?)することで、歯磨き後の残存菌の増殖やバイオフィルムの形成を抑制できるという流れになるわけです。
当然、マウスウォッシュやタブレットなども歯磨き後です。
ただし、就寝前にヨーグルトを食べたときは歯磨きした方がいいらしいですよ。
L8020菌を含んだ商品をつかった多くの人が「口の中の粘つきが少なくなった」と実感しているとのこと。
全身の健康にも影響を与える「口腔ケア」として、毎日の歯磨き習慣にL8020菌をプラスしてみるのもいいですね!
結論は第一に歯磨きによる機械的バイオフィルム除去と乳酸菌による口腔内フローラ維持と口腔内環境の整備でしょうか。
疑問は乳酸菌摂取後の歯磨きで良いのではと感じました。
返答が遅くなり、申し訳ありません。
オーラルケアを効果的に実践する方法の結論は、おっしゃる通り、歯磨きによるバイオフィルムの除去と、乳酸菌L8020による口腔環境改善作用です。
しかし、乳酸菌摂取後に歯磨きをすると、乳酸菌のほとんどが洗い流されてしまい、有用菌の定着とそれによる口腔内環境の改善効果が著しく低下してしまいます。
このため、口腔改善に有用な乳酸菌の摂取は「歯磨き後」が推奨されるわけです。
口の中に乳酸菌を植えて増殖させ、歯磨きで取り除けなかった歯周病菌を抑制するのが目的ですから、ぜひ歯磨き後のご利用をおすすめします。